富山大学 医学部 学部案内2025
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&Art英皇娱乐集团感染症に関する研究発表で演題賞を受賞15Social基礎医学Fundamental社会医学臨床医学Clinical成人保健領域高齢者保健領域法医学領域大医は国を癒す成人保健領域の調査?研究としては,約5千人の地方公務員を対象として,心理社会的ストレスやワークライフバランスの心身への影響を調査しています。この研究は,英国のロンドン大学ユニバーシティ?カレッジおよびフィンランドのヘルシンキ大学との国際共同研究です。その結果,日本の労働者は,労働時間が長く,ワークライフバランスが悪いことが分かり,それが日本の労働者の睡眠やメンタルヘルスに悪影響があることが分かりました。日本,英国,フィンランドという国家の体制や保健医療システムの異なる国を比較して類似点や相違点を明らかにすることで,それぞれの国の特徴がよく分かり,疾病対策につなげやすくなります。高齢者保健領域では,約1.3千人の富山県の高齢者を対象とした調査において,短い教育歴や肉体労働の職歴,糖尿病などの生活習慣病の既往歴が,認知症の発生リスクを高めることを明らかにしました。また,高齢者の歯の喪失は,偏食や少食を介して筋力の低下や虚弱を引き起こして高齢期の生活の質(QOL)を低下させることから,歯の喪失原因を明らかにしたところ,認知症のリスクとほぼ同様の結果となりました。以上から,高齢者の健康を維持するためには,小児期からの一生涯にわたる分野横断的な施策が重要であることが分かりました。法医学は科学的で公正な医学的判断を下すことによって,個人の基本的人権の擁護,社会の安全,福祉の維持に寄与することを目的とする学問です。人は突然死,事故,自殺あるいは犯罪によって予期せぬ死を遂げることがあり,このような多様な背景を有する遺体を解剖して死因を究明する業務を行っています。犯罪死の証明によって治安維持に貢献することに加えて,本学の特徴的な活動としては,現代医学の最先端の手法を用いて,肉眼や顕微鏡で病気が特定できない突然死例の遺伝子診断,事故や自殺の背景の原因となっている病気の探索があります。このような活動から解剖結果を死因究明に留まらず,遺族や社会に広く還元することを目指しています。中国古代の医書に「小医は病を癒し,中医は人を癒し,大医は国を癒す」とあります。社会医学は,いわば国を癒す学問であり,「社会の健康」に貢献する学問です。そのため,社会医学系の医師は,教育機関で教育や研究に従事している人だけではなく,厚生労働省等の行政機関の医師として国民の健康増進に貢献している人も多くいます。さらには世界保健機関(WHO)のような国際機関で活躍している人もいます。社会医学系の講座は,「人々の健康」を診ることに加えて,「社会の健康」をも診ることができる医師の養成に貢献しています。[疫学?健康政策学講座 教授 関根 道和]Science

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