西洋史概説 II
掲載内容は当時のものです。
歴史学とは、もちろん過去の出来事を分析する学問です。では、無限に存在するはずの「過去の出来事」は、どのようにして後世の人びとに「歴史」として認識されるようになるのでしょうか。この授業では、「過去の出来事」を特定し、分析する材料である史料(historical sources)に注目して、歴史学の基本的な作法や現代社会における歴史学の存在意義について考えます。
史料にはいくつかタイプがありますが、この授業では、(1)文書資料、(2)視覚資料、(3)聞き取り調査資料、の3つを取り上げ、これら史料から構成されるホロコースト(第二次世界大戦期にナチス?ドイツによって実行されたユダヤ人大量殺戮)という「過去の出来事」について考えます。
文書資料とは、主に公的機関によって残された文字による記録のことで、最もオーソドックスな史料といえます。
視覚資料の一例としては、何らかのメッセージを伝える下のポスターのようなものが挙げられます。こうした図像の意味を読み取ることが、歴史家には求められます。
聞き取り調査資料とは、「過去の出来事」を実際に体験した人びとに直接インタビューした記録のことで、当事者がまだ生存している時代の歴史、すなわち現代史に特有の史料であるといえます。
これら様々な史料から、歴史家は無限に広がる過去の中から特定の出来事を掬い上げ、それが、いま現在を生きる私たちにとってどのような意味を持っているのかを考えるのです。「現在」は、「過去」の積み重ねから成り立っている以上、過去に向き合うことは、現在を知ることに直結します。そうしたプロセスに関心のある方は、ぜひこの授業を受講してみてください。