「手で考えて身体でつくる」-デザイン/ビルド建築教育に関する研究
掲載内容は当時のものです。
近年あらゆる分野で情報化が進み、コンピュータが多用されています。しかし一方、情報化が進めば進むほど、人間の発想、問題発見および解決能力、協調性など、生身の人間が関わる能力の重要性も増してくるのではないでしょうか?
建築は「衣?食?住」の「住」を担い、人間生活の場をつくるものです。それは仮想世界ではなく、質感、大きさ、匂い、感覚のある五感に訴える実在する空間です。つまり、それらを学ぶには、頭で考えるだけでなく「手で考えて身体でつくる」ことを忘れてはなりません。
芸文では、建築の設計課題の前に、イスやシェルターをデザインして実際につくる課題に取り組むというユニークな教育を展開しています。その経験から、2018年度より科研費をいただき、実際につくる課題を用いた建築教育に関する研究を始めました。
これまで、国内外の20以上の大学や研究機関の事例を訪問しましたが、特に欧米では、このような建築教育が近年大きく見直されてきています。例えば、ユタ大学では、貧困層のための住宅を毎年一棟学生たちが実際にデザインし、建設しています。また、実際に手と身体でつくるため、土?石?木といった自然素材やサステナブルな建築手法へと展開される事例も多く見られます。
この研究を機に、日本建築学会において「デザイン/ビルド設計教育ワーキング?グループ」を発足させ、活発な情報共有、シンポジウムなども活発に行っています。このような研究が、建築をヴァーチャルな世界から人間的な空間へ留め、持続可能な建築手法の展開につながることを期待しています。