大きな災害発生後の「防災教育」と「子どもの心への配慮」の両立を考える
掲載内容は当時のものです。
子どもを災害から守るために、防災教育は必要です。災害発生後は特に、防災教育への機運が高まります。一方で、災害の発生後には、子どもの心理状態に細やかな配慮が必要です。防災教育においても、子どもが怖がった場合の対応や、怖がる子どもがいる場合の教育の進め方について、考えておかなくてはなりません。そこで、被災地の周辺地域と、被災地から離れた場所にある地域(遠方地域)の幼稚園や保育所、認定こども園において、2011年3月の東日本大震災の発生後(2011年度)にどのように防災教育を行ったか、幼児はどのような反応を見せたかについて調査を行いました。
調査の結果、被災地の周辺地域でも遠方地域でも、震災前より防災教育の回数を減らしたというところはなく(図1)、両地域とも7割を超える園で避難訓練の際に、東日本大震災があった事実や震災の怖さなどを話題にしていました(表1)。
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図1.震災後の防災教育の回数の変化
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表1.訓練の中で子どもに向けて東日本大震災の話をしたか
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一方、被災地の周辺地域でも遠方地域でも、「教育後しばらくの間、地震や津波の心配をする」「泣き出す」「保育者から離れなくなる」などの様子を見せた幼児がいました(表2)。
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表2. 震災後、防災教育を行った際に見られた子どもの行動
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大きな揺れを直接体験していなくても、テレビを観たり大人の会話を聞いたりすることで、防災教育の際に強い恐怖や不安が引き起こされるケースがあることがうかがえます。これらの結果より、大きな災害が起こった直後の防災教育においては、被災地からの距離に関係なく、子どもの恐怖を過度に煽らないこと、怖がる子どもへの対応の仕方を考えておくことが必要であると言えますね。
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西館 有沙 先生