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小学生のゲーム依存 全体の5.6%

富山大学地域連携推進機構地域医療保健支援部門の山田正明副部門長、関根道和教授らは、富山県内の小学生を対象とした研究からゲーム利用を調査し、ゲーム依存に関する新たな知見を得ましたので公表します。

事業と研究内容

今回の研究は、2018年7~9月に富山県教育委員会が実施した「とやま安心ネット?ワークショップ事業」の一環です。富山県内の4~6年生の小学生13,092名を対象に、質問紙を用いた調査を実施しました。全体の回収率は97.6%、最終分析数は11,826名(88.2%)でした。調査内容には、個人の生活習慣、学校、家庭での生活に加えてネットの利用時間やゲーム依存(国際疾病分類:ICD-11での診断項目)について調査をしました。

ゲーム依存は、世界中の青少年において喫緊の課題とされており、世界保健機関(WHO)は2022年からゲーム依存(疾患名gaming disorder)を正式な精神疾患と認定すると発表しています。

具体的な診断項目は以下の3つです。

  1. ゲームを使用する時間をコントロールできない。
  2. 生活の中でゲームを優先してしまう。
  3. 生活上(学業、家庭、仕事など)において、ゲームのせいで重大な問題を起こしている。それでもゲームをやめられない。

この診断項目は、精神科医が診察時に使用するものですが、今回は大規模な疫学調査のため 質問紙にて上記3つの項目を質問し、全てに「はい」と答えた児童を「ゲーム依存」としました。

ネット時間とゲーム依存:2時間の利用で、半数以上が時間のコントロールが不能に

調査の結果、ゲーム依存(が疑われる児童)は全体で5.6%(男子7.8%、女子3.2%)でした。40人学級の場合、ゲーム依存の児童は2~3名存在することになります。

次に、平日のネット時間(=ゲーム以外のSNSや動画閲覧を含む)とゲーム依存の診断項目の関係を示します(図1)。項目1(ゲーム時間のコントロール不能)は、全体の37.5%に見られました。ネット時間が2時間を超える児童では50.1%がコントロールできないと回答しています。項目2(生活の中でゲームが優先)は全体の19.1%に見られました。項目3(生活上で重大な問題)は全体の14.3%にみられ、ネット時間が4時間を超える児童では34.8%でした。ネット時間が長いほど、ゲーム依存への危険性が高まることがわかります。

ゲーム依存の関連要因:不健康な生活習慣と、親子のかかわりが少ないことがリスク

最後に、ゲーム依存と生活習慣、学校、家庭環境との関連について、ロジスティック回帰分析を用いた分析を行ました。これによりゲーム依存の危険度(オッズ比:OR)を算出しています(図2)。分析の結果、ゲーム依存は男子(女子に比べてOR=2.6倍)、不健康な生活習慣(起床が7時以降OR=1.35倍、運動不足OR=2.23倍、遅い就寝OR=1.60~2.52倍)、いらいらが頻回(OR=1.40~1.89倍)、学校での環境(登校拒否感情が頻回OR=1.75~1.92、授業理解度が低いOR=1.41~1.53)、家庭での環境(親子であまり会話がないOR=1.34、ネット利用に関するルールがないOR=1.21)の項目が有意に高い危険度(関連)を示しました。

以上の結果から、ゲーム依存の対策には①児童が規則正しい生活習慣をもつこと、②親は家庭で子供との会話を増やし、家庭でのルールを作ること、が対策として重要と思われました。

コロナ禍とそれに引き続くGIGAスクール構想のもと、小学生も一人一台のタブレットを所有する時代となっています。インターネットは学習上でも欠かせないものとなっていますが、今一度、家庭内で依存症の危険性や使用時間に使ついて、子どもと話し合う必要があります。

この研究成果は疫学の国際誌、Journal of Epidemiologyに早期オンライン掲載されました。

論文情報

Yamada M, Sekine M, Tatsuse T. Pathological gaming and its association with lifestyle, irritability, and school and family environments among Japanese elementary school children. Journal of Epidemiology. (令和3年11月6日オンライン先行掲載:https://doi.org/10.2188/jea.JE20210365