TOPICS

ブラックホール長年の謎“ジェット現象”の噴出条件を解明
新たな理論モデルとブラックホール観測の進展へ貢献

本研究のポイント

?ブラックホール周辺からほぼ光の速さでガスが噴き出るジェット現象の発生条件を解明。
?流れ込むガスが十分速くブラックホールへ近付くことが噴出する条件。
?これまで提案されてきた多くの理論モデルは大きく見直しが必要。
?宇宙の歴史をコントロールしてきたプロセスの理解へ前進。

研究概要

 名古屋大学宇宙地球環境研究所の山岡 和貴 特任准教授、富山大学大学院理工学研究科の川口 俊宏 教授らの国際研究グループは、ブラックホールからほぼ光の速さで噴出するジェット現象の発生条件を明らかにしました。
 宇宙のあまねく場所に存在するブラックホールは、普遍的にジェット現象を発生させ、そのメカニズムは長年の謎とされてきました。本研究はその一端である、発生の条件について観測的に解明しました。
 本グループは、ブラックホールと恒星からなる連星系の X 線と電波での観測データについて、時間微分量や時間積分量を用いて分析しました。その結果、ブラックホールへ流れ込むガスが形成するガス円盤において、最もブラックホールに近い位置(内縁半径)が(i)充分速くブラックホールへ向けて近付いて急激に小さくなり、(ii)安定してブラックホールの周りを回転することができる最内縁安定軌道注 1)に達すること――の 2つが噴出条件であると分かりました。
 本研究により(1)動的な条件でジェット噴出が起きることが分かったため、静的な条件でジェット噴出する多くの理論モデルに修正が必要であることが分かりました。また、(2)ジェット噴出の予兆現象が分かったことで、噴出を捉えるための緊急好機観測の成功率が上昇すること、(3)ジェットが当分噴出しない条件も分かったことから、噴出が予想されるタイミングに観測資源を集中できること、および(4)各銀河の進化史をコントロールしてきたと考えられるジェット現象の理解を前進させることなどが期待されます。
 本研究成果は、2025 年 4 月 8 日付(日本時間)国際学術雑誌『Publications of the Astronomical Society of Japan』に掲載されました。

研究内容の詳細

ブラックホール長年の謎“ジェット現象”の噴出条件を解明 新たな理論モデルとブラックホール観測の進展へ貢献[PDF, 7MB]

論文情報

論文名

X-ray Spectral and Timing Properties of the Black Hole Binary XTE J1859+226 and their Relation to Jets

著者

K. Yamaoka (名古屋大学), T. Kawaguchi (富山大学), M.L. McCollough (ハーバード-スミソニアン天体物理センター), R. Farinelli (イタリア国立天文学研究所) and S. Trushkin (カザン連邦大学)

掲載誌

Publications of the Astronomical Society of Japan

DOI

https://doi.org/10.1093/pasj/psae113

お問い合わせ

富山大学 大学院理工学研究科 (学術研究部工学系)
教授 川口 俊宏 (かわぐち としひろ)