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超低電圧駆動有機ELの材料選択を革新~界面スペーサー技術で性能を飛躍的に向上~

本研究のポイント

?超低電圧での駆動が可能なエキサイプレックス①アップコンバージョン型有機EL(ExUC-OLED)における、材料選択の難しさという喫緊の課題を解決。
?ドナー層とアクセプター層の間にごく薄いスペーサー層を挿入する技術により、デバイスの外部量子効率(EQE)を約80倍向上させることに成功。
?使用するスペーサー材料の性質(電気双極子モーメントなど)が性能に影響することを明らかにし、さらなる性能最適化に向けた設計指針を得た。
?本技術はExUC-OLEDの材料設計の自由度を大幅に拡大し、多様な高性能?省エネルギーOLED開発を加速する。

研究概要

 富山大学大学院理工学研究科の深澤亮祐 大学院生(当時)、同大学学術研究部工学系の森本勝大 准教授、中茂樹 教授らの研究グループは、極低電圧で駆動可能なエキサイプレックスアップコンバージョン型有機EL(ExUC-OLED)において、ドナー?アクセプター(D/A)界面にスペーサー層を挿入するという新たなアプローチにより、エネルギー移動効率を自在に制御し、これまで困難とされていた材料の組み合わせでも高効率な発光を実現することに成功しました。
 この手法により、従来はほとんど発光しなかったデバイスにおいても、スペーサーの挿入によって外部量子効率(EQE)②が約80倍に向上するという顕著な成果が得られました。さらに、スペーサー材料の分極特性(電気双極子モーメント③)によっても性能が変化することが明らかとなり、ExUC-OLEDの材料設計における新たな指針が示されました。
 本研究成果は、次世代の超低電圧駆動型有機ELデバイスの開発において、材料選択の自由度を飛躍的に高めるものであり、今後の省エネルギー型ディスプレイや照明技術の実用化に向けた大きな一歩となることが期待されます。

本成果は、科学研究費助成事業(20KK0323, 24K00921)、NEDO官民による若手研究者発掘事業(JPNP20004)、泉科学技術振興財団研究助成、松籟科学技術振興財団研究助成の一環として行われ、米国化学会の国際学術誌『ACS Applied Optical Materials』に2025年6月4日に掲載されました。

研究内容の詳細

超低電圧駆動有機ELの材料選択を革新~界面スペーサー技術で性能を飛躍的に向上~[PDF, 548KB]

論文情報

論文名

Improved freedom of material selection for exciplex upconversion-type organic light-emitting diodes by controlling energy transfer at the donor–acceptor interface

著者

Ryosuke Fukazawa, Masahiro Morimoto*, and Shigeki Naka

掲載誌

ACS Applied Optical Materials

DOI

https://doi.org/10.1021/acsaom.5c00014

お問い合わせ

富山大学学術研究部工学系電気電子工学コース
准教授 森本 勝大(もりもと まさひろ)

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