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末梢と中枢神経系の神経活動をin vivoにて評価し、神経障害性疼痛の機構を解明

研究のポイント

?神経障害性疼痛モデル(部分坐骨神経結紮:PSNL※1)において、末梢(後根神経節:DRG※2)と脊髄※3の神経ニューロン活動をin vivoで評価する枠組みを確立しました。
?PSNLラットでは、機械刺激(von Frey刺激※4)に対する痛み関連動作(機械的アロディニア)が術後14日まで持続していました。
?行動評価と同じ機械刺激に対する脊髄後角神経ニューロンの刺激誘発の発火頻度、さらには自発的な神経ニューロンの発火頻度が増大しました。
?同じ刺激条件下でDRGの活動マーカー(pERK※5)も自発的?刺激依存的に増加し、DRG pERK変化と脊髄後角ニューロン発火の変化が連動しました。
?以上より、末梢神経活動の亢進が脊髄ニューロン活動の過敏化(中枢感作)を駆動する可能性が示され、神経障害性疼痛の病態理解と新規治療薬創製に貢献することが期待されます。

研究概要

 富山大学学術研究部薬学?和漢系 応用薬理学研究室の歌大介准教授、塩野義製薬株式会社の山根拓也研究員らの研究グループは、神経障害性疼痛モデルとして広く用いられる部分坐骨神経結紮(PSNL)モデルにおいて、末梢(後根神経節:DRG)と脊髄(脊髄後角)のニューロン活動を、in vivoにて系統的に評価しました。その結果、PSNLモデルでは、DRGの神経活動(pERK陽性細胞の増加)と脊髄後角ニューロンの発火頻度増加(刺激誘発?自発)とが同じ機械刺激条件で並行して高まり、両者が連動することが示されました。これにより、末梢神経活動の亢進が脊髄の神経過敏化を引き起こすという神経障害性疼痛の重要な機構が、in vivoのデータとして裏付けられました。
 本研究成果は、国際学術誌「International Journal of Molecular Sciences」に 2025 年 12月 22 日(日本時間)に掲載されました。

用語解説

※1)PSNL(部分坐骨神経結紮)
坐骨神経の一部を結紮して神経損傷を生じさせ、神経障害性疼痛(機械的アロディニアなど)を再現する動物モデルです。

※2)DRG(後根神経節)
末梢感覚神経の細胞体が集まる部位で、末梢で受け取った刺激情報を脊髄へ伝える起点の一つです。

※3)脊髄
末梢(皮膚、筋、骨、各種臓器、粘膜など)で受け取った情報(触覚、圧覚、痛覚、温度覚)が最初に入力する中枢領域です。感覚や運動の情報を伝達する重要な経路であり、痛み信号の中継点でもあります。

※4)von Frey 刺激
一定の圧力を加えるフィラメントを用いて、動物の痛覚反応を定量的に測定する行動試験です。

※5)pERK(リン酸化ERK)
刺激に応答して細胞内で増加するシグナル分子のリン酸化型で、神経活動の指標(活動マーカー)として用いられます。

研究内容の詳細

末梢と中枢神経系の神経活動をin vivoにて評価し、神経障害性疼痛の機構を解明[PDF, 354KB]

論文情報

論文名

In Vivo Assessment of Peripheral and Spinal Neuronal Activity in the PSNL Model:Insights into Neuropathic Pain Mechanisms.

著者

Daisuke Uta *, ?, Takuya Yamane *, Sosuke Yoneda, Erika Kasai, Toshiaki Kume.
* Contributed equally to this work, ?Corresponding author

掲載誌

International Journal of Molecular Sciences

DOI

https://doi.org/10.3390/ijms27010124

お問い合わせ

富山大学学術研究部薬学?和漢系 応用薬理学研究室
准教授 歌 大介

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