tRNA工学 × 放線菌酵素を利用した新しい抗生物質創出法の開発
ポイント
- tRNAを利用した新しい天然物改変手法を開発し、抗生物質ストレプトスリシンの多様な誘導体創製に成功しました。
- 基質特異性※1)をもつ酵素Sba18の機能と構造基盤を解明し、分子設計による側鎖改変を可能にしました。
- 新規誘導体の創出により、抗菌活性と選択毒性を制御できる可能性を提示しました。
概要
細菌感染症の治療に不可欠な抗生物質は、現代医療を支える重要な医薬品です。しかし近年、既存薬が効きにくい多剤耐性菌の増加が世界的な問題となっており、新しい作用や構造をもつ抗生物質の創出が強く求められています。富山大学学術研究部薬学?和漢系の森田洋行教授らの研究グループは、東京大学や北海道大学などの研究グループとともに、福井県立大学生物資源学部の丸山千登勢准教授、濱野吉十教授らが主導する共同研究に参画し、放線菌が生産する強い抗菌作用をもつ抗生物質「ストレプトスリシン(ST)」※2)の分子構造を人工的に改変できる新たな手法の開発に成功しました。森田教授らの研究グループは、この共同研究において、酵素の立体構造解析を主に担当しました。本研究では、ST類抗生物質の分子構造を改変するケモエンザイマティック手法※3)の開発に貢献し、これまでにない新規ST誘導体を多数創製することに成功しました。本成果は、tRNAを利用した天然物改変という新しい分子設計戦略を提示するものであり、抗生物質をはじめとするペプチド系天然物の化学多様性拡張に大きく貢献します。将来的には、新規抗生物質の開発を加速し、感染症治療に新たな道を切り開くことが期待されます。
本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に2026年3月13日(金)(日本時間)に掲載されました。

用語解説
※1)基質特異性
酵素が特定の分子(基質)をどの程度選択的に認識?反応するかを示す性質。本研究では、この特異性の違いが誘導体創出の鍵となる。
※2)ストレプトスリシン(ST)
放線菌が生産するペプチド系抗生物質の一種。側鎖構造の違いによって抗菌活性や毒性が大きく変化することが知られている。
※3)ケモエンザイマティック手法
化学合成と酵素反応を組み合わせて分子を合成?改変する手法。酵素の高い選択性と化学合成の自由度を併せ持ち、多様な化合物の創出が可能となる。
研究内容の詳細
tRNA工学 × 放線菌酵素を利用した新しい抗生物質創出法の開発[PDF, 271KB]
論文情報
論文名
tRNA-dependent chemoenzymatic transformation of aminoacyl pendant moieties of streptothricin antibiotics
著者
丸山千登勢,中嶋優,松田貫暉,Sherif A. Hamdy,内山駿,後藤佑樹,森貴裕,小笠原泰志,新家一男,阿部郁朗,大利徹,菅裕明,森田洋行,濱野 吉十
掲載誌
Journal of the American Chemical Society (2026年3月13日オンライン掲載)
DOI
https://doi.org/10.1021/jacs.6c00367
お問い合わせ
富山大学学術研究部薬学?和漢系(和漢医薬学総合研究所)
教授 森田 洋行
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