脳内のグリア細胞から神経細胞に直接変える治療法血管性認知症モデルで海馬のダメージを抑制
ポイント
- 脳内のサポート役であるグリア細胞を、神経細胞へ直接作り変える新しい遺伝子治療のアプローチを血管性認知症モデルで実証しました。
- 神経誘導に関わる3つの転写因子(Ascl1、NeuroD1、Sox2)をグリア細胞に導入することで、記憶に関わる海馬の炎症を抑え、ダメージを軽減しました。
- 海馬での新たな神経細胞の生成と認知機能の改善傾向が確認され、認知症に対する画期的な再生医療となることが期待されます。

概要
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科のRicardo Satoshi Ota-Elliott大学院生(研究当時。現:ペルー日秘百周年記念病院小児科)と岡山大学学術研究院医療開発領域(岡山大学病院)の福井裕介助教、同大学学術研究院医歯薬学域の山下徹准教授(研究当時。現:富山大学学術研究部医学系脳神経内科教授)、同大学学術研究院医歯薬学域の石浦浩之教授の研究チームは、脳内でサポート役を担う「グリア細胞」を記憶に関わる「神経細胞」へ直接作り変える、画期的な遺伝子治療のアプローチを血管性認知症のモデルマウスで実証しました。神経への分化を促す特定の遺伝子(3種の転写因子)を導入することで、記憶を司る「海馬」の炎症を抑え、記憶に不可欠な領域の深刻なダメージを防ぐことに成功しました。さらに、海馬で新たな神経細胞が生成され、認知機能の改善傾向も確認されました。 これらの研究成果は2026年4月16日、国際脳循環代謝学会の学会誌「Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism」にResearch Articleとして掲載されました。 血管性認知症は認知症の中で2番目に患者数が多く、深刻な世界的課題となっています。これまで根本的な治療が難しかったこの病気に対し、脳にもともとある細胞を利用して新たな神経細胞を生み出す本成果は、脳のダメージを直接修復するという全く新しい治療の可能性を示すものです。 本研究は、認知症を始めとした神経疾患の治療において画期的な「再生医療(遺伝子治療)」の実現に向けた大きな一歩です。今後、神経細胞が作られる詳しいメカニズムの解明を進めることで、認知症によって失われた記憶や認知機能を回復させる、革新的な新薬や治療法の開発へとつながることが期待されます 。
研究内容の詳細
脳内のグリア細胞から神経細胞に直接変える治療法血管性認知症モデルで海馬のダメージを抑制 [PDF, 481KB]
お問い合わせ
富山大学学術研究部医学系脳神経内科
教授 山下 徹
- TEL:076-434-7309
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